片岡嶋之亟、私の生い立ち 第21回

 <メンコのこと>

 頭巾を被って遊ぶこともそうですが、少年時代の私にとって時代劇、チャンバラ映画の世界は、心に占めている度合いからいっても、生活の一部という感じでした。当時の子供にとって一番の宝物はメンコやビー玉でしたが、メンコは缶に入れて何百枚という数を持っていました。その表を飾っているのは綺羅星のように輝く、時代劇のスターたちでした。
 若手花形スターが扮していた前髪の若侍は、人気のダントツでしたが、チャンバラゴッコの主役のモデルとしては、頭巾の侍、頭巾をとったムシリの浪人者もかなり人気があり、ムシリのかつらが似合うスターもたくさんのメンコの表を飾っていました。なんといっても嵐寛寿郎さん、市川右太衛門さん、大友柳太朗さんですね。
 綺羅星のように輝く、時代劇のスターたちの描かれたメンコで遊んでいると時の経つのを忘れてしまい、何時の間にか日が暮れていました。近所の子供たちが一人ずつ呼ばれて減っていき、それでも家に帰りたくなかったの覚えています。地面に置いてあるメンコの傍に自分のメンコを叩きつけ、その風の勢いで相手のメンコが裏向けばもらえるという簡単なルールなのですが、皆真剣でした。気にいっているメンコはとられたくないので、裏返されないように縁を折り曲げたり、蝋を塗ったりと、子供なりの工夫をいろいろとしたものです。メンコ遊びの中で盛り上がるのは薄く軽いメンコで、数回転して表に戻るという技ありのものでした。その軽いメンコの表は猿飛佐助などの忍者だったように思います。交換もよくしました。今の子供たちが「遊戯王カード」「ポケモンカード」などで遊ぶのと同じ感覚かもしれません。
 私を含めて近所の子供たちはチャンバラごっこやメンコなどを通じて、時代劇映画の世界にどっぷりと浸って暮らしていたのは間違いないと思います。



第20回へ    第1章終了
プロフィールに戻る